怪笑小説 / 東野圭吾

東野圭吾の「怪笑小説」の感想などです。

年金暮らしの老女が芸能人の“おっかけ”にハマり、乏しい財産を使い果たしていく「おつかけバアさん」、“タヌキには超能力がある、UFOの正体は文福茶釜である”という説に命を賭ける男の「超たぬき理論」、周りの人間たちが人間以外の動物に見えてしまう中学生の悲劇「動物家族」…etc.ちょっとブラックで、怖くて、なんともおかしい人間たち!多彩な味つけの傑作短篇集。

Amazonより引用

短編集ですがミステリーではありません笑
ちょっとブラックな書き方で最後にオチをつけて世の中の風潮を皮肉るような作品群ですね。
まあはっきり言って内容的にはしょーもない内容でふざけまくりな作品ばかりなので人によって好みが分かれそうですが、個人的には大好きです、こういうの。
爆笑させてもらいました( ̄ー ̄)
東野圭吾らしくサクサク読みやすい文章だし、ちょっと暇つぶしに楽しむには最適な作品だと思います。
そして、各作品秀逸なのですが、あとがきに東野圭吾自身の各作品についての解説があるのがまたとても良いです。

以下、軽くそれぞれの短編についての感想を。
ネタばれ注意で。

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鬱積電車

電車通勤していた人なら共感しまくりですな。
しかし、東野圭吾は電車通勤時代はあまりなかったと思うので、こんな作品を書けるのがちょっと意外。
最後に自白ガスが漏れていることに気づいたところで本編は終わっていますが、その後どうなったのかも書いてほしかったな〜と個人的には思いました。
まあ、そこを明らかにしてしまうのは野暮なのかもしれませんが。

おっかけバアさん

うーん、この作品だけは唯一共感できなかったかな。
おっかけになる過程がイマイチピンとこなかったので。
しかし、おっかけになってからの転げ落ちるような変貌についてはホントによく描写できていると思います。
おっかけこわい。

一徹おやじ

完全に巨人の星なわけですが、こんなの書いてしまって大丈夫だのだろうかwww
そして、最後にまさかのオチがw
ホント、バカバカしすぎてひどいwww

逆転同窓会

これについてはちょっと唸らされました。
たしかに引退後の教師の同窓会の中に社会人現役バリバリの教え子が何人か参加したりするとこんな感じになるかもねぇ。
そして、あとがきでのこの作品についての解説がまたおもしろい。
なるほど。そういうところからこの作品が来ているのか。
そして、東野圭吾は教師という職業の人をあまり好きではないようですね。
そのわりには浪花少年探偵団 / 東野圭吾とか作品書いてるけどw

超たぬき理論

たぬきが空を飛ぶ。そしてUFOはたぬきであるという超絶おバカ理論。
これを様々な面から無理やり説明しまくるというお話。
もう無理やりすぎて爆笑w
しかし、単におバカな話だけというわけではなく、UFOが宇宙人の乗り物であると言っている人たちも同じようなものだろと皮肉っているようにしか思えないのだが、これだけバカにしまくってしまって大丈夫なのだろうかと少し心配(^_^;)

無人島大相撲中継

過去の大相撲の取り組みをまるでラジオの実況中継をするようにすべて話すことができるというお話。
無人島の暇つぶしとして大盛りあがりし、最後には八百長するという話に。
しかし、まさに歩く百科事典のこの人にウソの実況ができるのかどうか。。。。
いやいや、バカバカしいお話ですなw

しかばね台分譲住宅

ある日の朝、とある住宅地で殺人死体が発見された。
これが世間に公表されてしまうとこの住宅地の価値が下がってしまうと考えた住人たちは、この死体を近隣の別の住宅地に置いてくることにした。
しかし、翌々日の朝。
捨ててきたはずの死体がまた住宅地に置かれている!
これはまずい。なんてやつらだ!また置きに行かなくては!!
なんてことが延々と行われるという狂気のお話。
そして、最後には、、、、これがベースとなって伝統のスポーツになったらしいw
なんだそれwww

あるジーサンに線香を

完全に「アルジャーノンに花束を」のアレンジ版なのですがこんなにどうどうとパクっていいんでしょうかwww
この作品では老人が若返ることができるという話なのですが、当初は「死ぬのなんて怖くない」と言っていた老人が一度は20歳くらいまで若返って人生の楽しさを謳歌します。
しかし、アルジャーノン同様その後若返りの効果が切れてしまうわけですが、再度老化が始まったことに気づいた時の悲しさ。
そして、最後には元の老人へと戻ってしまったのですが、その時にはさらに老いることへの恐怖を感じ、さらに当初はまったく感じていなかった「死にたくない」という気持ちにあふれてしまう。
短編で少々面白おかしく描写されていますが、この切なさがすごい。
まさにアルジャーノンと同じです。
これ、長編だったらアルジャーノンを超える切なさ爆発な作品になったのではないだろうか。

動物家族

主人公の肇は人が動物に見えてしまうというお話。
正直なぜ動物に見えてしまうという概念を持ち込んだのかよくわからなかったのだが、それは最後に肇が怪獣らしきものに変身したということを言いたいからなのかな?
ちょっとその辺で個人的にはモヤモヤしてしまうが、さんざんいいようにやられまくっていた肇が、最後は怪獣らしきものに変身して大暴れするストーリーは少しスッキリ。
もちろん、ふだん大人しいからといってぞんざいに扱って、最後はキレさせるというのは最悪なので、ふだん大人しい人にも気をつけましょうという意味を込めての作品だとは思うのだが。
しかし、「自分としては、これまでに書いてきた短編の中で最も思い入れの強い作品」と東野圭吾自身があとがきで書いているので、たぶん自分は著者の思い入れとやらを受け取れていないのだろうなと思った。残念。

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