東野圭吾の「ブルータスの心臓」の感想などです。
最新ロボットの研究者であり野心家の末永拓也は、勤務先の創業者令嬢・星子との結婚を目論んでいた。だがある日、遊び相手の康子から妊娠を告白される。困惑する中、星子の兄・直樹から、康子殺害計画を持ちかけられる。直樹もまた康子と男女関係にあり、妊娠をネタに脅迫されていたのだ。綿密に計算された完全犯罪は、無事成功するかに思われたが、驚愕の事態が発生する。
Amazonより引用
この作品もよく練られている作品だなと思いました！
真相を知ってしまうとそれほど複雑ではないのですが、最初は真相から遠く離れたところから捜査が開始されるわけで、少しずつ真相に近づいていく楽しさが味わえる作品ですな。
その途上ではかなり複雑に事実が絡み合っていて、その辺がホントに良く出来ているなと感じます。
読者は末永視点で事実が見えているので、警察が末永が知っている真相に近づいてくる緊張感と、末永が把握できていない真相に迫っていく楽しさが同時に味わえる構成になっています。
最後のオチも個人的にはなかなか秀逸だったな〜と思います。
あっさりした一文で、まさにオチ！という感じ。
なんとなくだけども、最初にこのオチを思いついてトリック等々ストーリー構成を考えたのかなと思いました。
この作品は登場人物の背景をきちんと整理しておくことが重要だと思うので、簡単にメモ。
以下盛大にネタバレありです。
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末永拓也
MM重工の社員で人工知能ロボットの開発エンジニア。ストーリーは末永を主人公として末永視点で書かれている事が多い。
非常に利己的かつ合理的な性格で優秀な人物として描かれている。
遊び相手の康子が妊娠したことにより、物語が始まる。
佐山総一
警視庁捜査一課の刑事で警察側の主人公の扱い。
警察側の描写は佐山の視点で描かれている。
雨宮康子
MM重工の社員。利己的な性格で、いわゆる玉の輿をかねてより狙っていた。
妊娠し、父親の可能性のある男達に対して強請ろうとしていた。
仁科敏樹
MM重工専務で次期社長候補。娘はいるが息子がいないので、正妻の子ではなくても息子が欲しいと考えている。
橋本敦司
MM重工の社員で末永とは領域は異なるが優秀なエンジニア。
康子の子の父親候補の一人。
仁科直樹
MM重工開発企画室長。敏樹の前妻との間の息子だが、父親をとても恨んでいる。
康子の子の父親候補の１人として、末永、橋本と協力して康子殺害計画を主導。
中森弓絵
MM重工社員で直樹の部下。
昨年起こったロボット事故により婚約者が死亡している。
酒井悟郎
MM重工の社員で昼夜交代のロボット点検業務に従事している。
弓絵は幼馴染で彼女のことをずっと想っていた。
感想ですが、まずは完全犯罪成立！かと思った計画で、直樹が殺されていたことにビックリでしたね〜
まあ、よくよく考えるとストーリー通り完全犯罪が成立したらそこで話が終わってしまうので、なにか予定外のことが起きるに決まっていますがｗ
そして、そこからは末永視点で何が起こったのか？と共感を持ちながら読み進めていく展開になります。
しかし何もわからないまま橋本も殺され、次はおそらく自分の番。
ここで末永が康子を殺すわけですが、ここの描写もよく出来ていますね〜
ただ単に殺したという事実が欲しいだけなのに、裏の裏を読む的なストーリーを挟んできて物語に厚みをもたせています。
そして、あっと驚くDの存在。
そして、まさかの敏樹父親説の浮上。
ほんとにどんでん返しを何度食らったことか(^_^;)
全体的によく出来ていて傑作だと個人的には思いましたが、あえて重箱の隅をつついておきます。
- 突然死んだとは言え、直樹が持っていたナオミの事故資料を弓絵が入手してしまうというのはちょっと都合が良すぎるような。
これが成り立たないと、末永は真相にたどり着けないのでストーリー的に成り立たないというのがちょっとモヤる。 - 橋本の性格的に康子と遊びのつもりで肉体関係に及ぶかな？？
- 犯人であった悟郎ですが、もともと弓絵の婚約者も殺してるし、かなりの異常者だよね？
はっきり言って頭おかしいレベル。
であるのに、弓絵と対しているときは非常にまともでむしろ常識人的な描写。
こんなに人によって変われるかねぇ。 - 超が付くほどの几帳面できれい好きな人物として橋本が描写されているのに、高速の領収書を破った紙片が落ちていることなんてあるかねぇ。
ここは警察捜査の根本になっているので、もう少しありそうな手がかりにしておいて欲しかったな。 - 佐山を中心とする警察捜査の結果が、最終的にどうなったのか描写がなかったのが残念。
真相にたどり着いたけども、結局末永はナオミに殺されてしまったので一歩遅かった！という結末だとは思うのだけれども、せっかく練りに練って捜査状況を描写してきたのだから、警察側のオチも１つ欲しかったですな
まあなんにしても傑作でした(￣ー￣)
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