祈りの幕が下りる時 / 東野圭吾

東野圭吾の「祈りの幕が下りる時」の感想などです。
加賀恭一郎シリーズ第10弾。

明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。シリーズ最大の謎が決着する。吉川英治文学賞受賞作。

Amazonより引用

加賀恭一郎シリーズの最新作。
例によって、シリーズものとは言ってもこの作品単体で完結している内容なのでいきなりこの作品を読んでも普通に楽しめると思いますが、ある意味これまでの加賀シリーズの集大成とも言える内容になっているので、これまでの加賀シリーズの内容が頭に入っていた方がより楽しめるという作品になっていると思います。
ついに、加賀の母親が家を出てからの様子が明らかになり、家を出た真相が最後の最後で明らかになります。
そして、なぜ加賀が日本橋にこだわっていたのか、謎が解けます。

ミステリーの方は、今回はかなり複雑な構成になっています。
2つの殺人事件があり、それとは別に加賀自身に纏わる謎が混ざり合う非常に読みごたえのある作品です。
そして、例によってこれらの事件の根底にある人間ドラマの描写がすばらしい。
行われたことは殺人なので非常に凶悪だし、残念ながらハッピーエンドとは言い難いものがあるのですが、ある種の感動があると思います。

この作品も詳しく感想を書こうと思うとネタばれ必死ですね(^_^;)
ということで、以下ネタバレありの感想です。

今回は一連の加賀恭一郎シリーズでの伏線を回収しまくったという内容なので、いろいろと回想シーンやら手紙やらが多かったですね。
そして、本作品のキモである浅居親子の真相も回想シーンで語られるので、そういう意味ではミステリーと言うよりも人間ドラマメイン!と言いたいところですが、ミステリーの方もシチュエーションがかなり複雑で手が込んだ内容になっていると思います。
はっきり言ってトリック的なことはまったく大したことないと思うのですが、そんなことは気にならないくらいストーリーが良くできているな〜と感じました。
加賀の母親百合子が家を出た理由やその後の生活ぶりなどは、そうだったのか、、、と納得。
浅居親子の一連のストーリーも、そういうことがあってこうなったのか、、と納得。
本当によくできたお話だと思います。

これまでの加賀シリーズなくしてはこの作品は生まれなかったはずで、そういう意味ではよくこういう形で完結できたな〜という感じです。
まあ、加賀は捜査一課に戻るようなので、これからも加賀シリーズは続くのだとは思いますが(^_^;)

といったわけでとてもおもしろかったし大満足な作品でしたが、あえて個人的に気になった点を。
今回はある意味加賀恭一郎に纏わる謎が解き明かされる回だったと考えれば、例えば、たまたま百合子と親しくなった綿部俊一が、実は押谷道子の遺体のあった部屋の住人越川睦夫であり、河川敷で死んでいたホームレスに扮した浅居忠雄であったという、まあ普通は起こりそうもない非現実的な偶然には目をつぶれるとしても、例えば一ヶ月に一回浅居親子が会ったその時がたまたま橋洗いの日で、しかもサングラスを外した瞬間をピンポイントで撮影され、それをさらに加賀が見つけ出せるなんていうのはさすがにちょっと都合が良すぎないか?と思います。

あと、綿部俊一と浅居博美が実は親子である(替え玉殺人)という推理ですが、どうして加賀がこの発想にたどり着いたのか、プロセスが自分は今回分からなかったです。
たしかにそう考えると辻褄が合うわけですが、当時の状況からすると、いくらなんでもちょっと突拍子ないんじゃないか?(要するに無理がある)と感じました。
この辺は他の読者の方々にも聞いてみたいですね〜

そして、最後まで読んで思ったのは、「祈りの幕が下りる時」というタイトル。
結局このタイトルの意味は最後まで明確にされなかったように思います。
自分としては、「祈り」とは浅居忠雄が娘の幸せを思った祈りであり、それが終わったことを浅居博美の作品である曽根崎心中の舞台にかけて「幕が下りる」と表現していると考えましたが、ちょっとわかりにくいな〜というのが正直なところ。
これだけの傑作なので、もう少し良いタイトルは無かったのだろうか?と自分的には若干モヤっています。

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