東野圭吾の「沈黙のパレード」の感想などです。
静岡のゴミ屋敷の焼け跡から、3年前に東京で失踪した若い女性の遺体が見つかった。逮捕されたのは、23年前の少女殺害事件で草薙が逮捕し、無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。町のパレード当日、その男が殺された――
容疑者は女性を愛した普通の人々。彼らの“沈黙”に、天才物理学者・湯川が挑む!
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ガリレオシリーズ第9弾。
３年前から行方不明となっていた並木佐織の遺体が、火災により発見されます。
この火災現場は蓮沼という男の実家で、蓮沼は過去に殺人罪の容疑者として逮捕されるが完全黙秘で無罪となった経歴を持ちます。
今回も実家から遺体が出てきた上に、作業着から佐織の血痕が検出されたので逮捕されますが、またもや完全黙秘により釈放されます。
佐織がいたのは物語の中心の舞台となる菊野市。
ここでは仮装パレードが行われます。
この仮装パレード開催中に蓮沼は何者かに殺されてしまいます。
状況からして蓮沼に恨みを持つものによる殺害と思われますが、佐織は商店街の人々からとてもかわいがられていたため殺害の動機を持つものは多く、また、蓮沼が殺害された現場はいわゆる密室だったので殺害方法も不明。
といった感じの背景の本作。
まずは、それぞれの人にいろいろな背景があり、それらをしっかり描写できているところがさすがですな。物語に引き込まれます。
まあまあの長編だと思うのですが、例によってわりと一気に読破しました(￣ー￣)
率直に言って、当初は最大の謎だと想っていたトリックは容易に想像が出来たので、今回はトリック的には大したことがないな、、と感じましたが、終盤は予想外の伏線の回収がいろいろあり、いつもながらすごく作り込んでるな〜と思いました。
一方、ガリレオシリーズとしては科学要素が少ない気がしたので、個人的にはガリレオシリーズでなくても良かったのでは？という感はありますね。
ガリレオシリーズはある意味科学バカに突き抜けた内容がウリだと想っていたので。
しかし、ガリレオはどんどん人間臭くなってきますね〜笑
以下ネタバレありの感想です。
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まずは、密室が嫌いそうな東野圭吾があえて密室を選んだのがちょっと興味深いですね。
それも、かなり無理矢理作ったような密室条件ｗ
まあ、トリックまで含めると、たいていの密室条件ってかなり無理しないと成立しないんでしょうね〜
ただ、この密室のトリックを最大の謎とするどころか、ほとんどただの前座レベルの扱いであるところが東野圭吾らしいところですかね。
密室前提で殺害方法のフェイクまで犯人達は用意していたわけですから。
そして、一応本作の最大のトリックはパレード中に液体窒素を運んだことなのだと思うのですが、これは個人的には推理するまでもなく最初からなんとなくそうなんだろうなと思いながら読んでいたのですが、どういう扱いだったのですかねぇ。
種明かし前に読者が当然思い当たる前提なのか、本当に最大のトリックだったのか。
あまりにも自然にわかってしまったのでそうなる前提のような気もしますが、これ以外のトリックとなると強いて言えばアガサ・クリスティのオリエンタル急行殺人事件チックな全員犯人的なものくらいしか思いつかず。
まあ、前述したとおりこの作品はトリックではなくストーリー構成に魅力があるので、トリックの部分はおまけかな、という気はしますが。
ということで、なんと言ってもびっくりしたのは、終盤の伏線回収の連続ですね。
蓮沼殺害の犯人は２３年前の被害者の親戚にあたる増村が主犯かと思いきや、計画では佐織の父である並木祐太郎が主犯であることがわかる。
しかし、計画は急病人の客が出たことにより、実際には佐織のプロデューサーだった新倉が手を下したことを自供。
しかも、この急病人は新倉が仕組んだことだとか。
いや〜込み入ってますねｗｗ
そして、もう一方の佐織殺害にまつわる真相。
実は蓮沼が単純に殺害したという話ではなく、夫とともに佐織をサポートしていた新倉留美が犯人で、その証拠を持っている蓮沼が脅していたというストーリー。
なるほどねーと思ったのも束の間、実は留美が佐織を突き飛ばしてしまった時には気絶していただけで死んでおらず、実際に殺害に及んだのは蓮沼だったという大どんでん返しからの大どんでん返し。
まあ、結局蓮沼じゃんという話ですがｗｗｗ
この推理が佐織のバレッタにより補強されるという伏線の回収がにくいですね〜
というわけで、なんとなくめでたしめでたし的な終わり方なのは良かったのですが、あくまでも「可能性が高い」というレベルで終わってしまったのが残念。
確定させてくれればもっとスッキリ爽快だったと思うんですがね〜
一点モヤモヤポイントを挙げておくと、蓮沼の場合は２回とも証拠不十分で釈放となるかなー
素人目にはかなり十分な証拠のように思えるし、実際にはそれよりも大したことのない証拠で死刑とかにもなっているイメージなのだが。。。
そうそう。最後に。
容疑者Xの献身 に絡んだセリフが湯川から出てきたのがなかなか感慨深いですね。
こういったセリフが出てくるあたり、ただの科学バカミステリーからはガリレオシリーズは卒業ですかね？？
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