東野圭吾の「魔球」の感想などです。
9回裏二死満塁、春の選抜高校野球大会、開陽高校のエース須田武志は、最後に揺れて落ちる“魔球”を投げた。すべてはこの一球に込められていた…。捕手北岡明は大会後まもなく、愛犬と共に刺殺体で発見された。野球部の部員たちは疑心暗鬼に駆られた。高校生活最後の暗転と永遠の純情を描いた青春推理。
Amazonより引用
高校生の天才ピッチャー須田武志に纏わるミステリー小説。
個人的にはミステリーというよりは、強烈な個性を持つ武志の生き様を描いた作品という感じです。
一見関係のない出来事が結局のところはすべて関係していたというストーリーは見事でしたが、自分としては「魔球」というタイトルに納得がいきません(^_^;)
たしかに魔球は出てくるし、なんならいわゆるひとつのダイイングメッセージとしても出てくるのですが、このダイイングメッセージはかなり無理矢理。
1つだけ魔球については重要なファクタがあるので取り去ることはできないけども、タイトルにするほどクローズアップする必要があったのかな?というのが素直な感想です。
冒頭で、9回裏二死満塁の場面で武志は狙ってか偶然か魔球を投げるわけですが、別にここで魔球を投げていなくてもなんの影響もないと思うし。
とてもおもしろい作品だったと思うけども、タイトルだけはちょっとモヤモヤします。
以下ネタバレありの感想です。
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おもしろかったのですが、理屈で言えばいろいろと納得のいかないものが多い作品ですねw
まず、武志が北岡を殺してしまったシーン。
武志は肩を痛めていたが、それを誰にも言わないように北岡と約束をしていた。
しかし、北岡はその約束を破って野球部の顧問である森川に相談しに行こうとしてしまう。
それを知った武志は、北岡に制裁を加えようとして犬を殺す。
ここまででも、え?って感じなのだが、さらに勢い余ってしまって北岡も殺してしまうとか、さすがにあり得ない気がしますな。
さらに、武志が自殺するシーン。
ハングリー精神満載な武志がこの程度のことで自殺するか?とも思うし、さらに、いくら他殺に見せかけるためとはいえ右腕を切らせるか?とも思うし、さらにさらに、弟の勇樹は兄の言うことを聞いて右腕を切って持ち帰るか??
そもそも、勇樹が腕を切ろうとした時にはまだ武志は生きていたっぽい描写もあったし、それじゃ遺体損壊ではなく実質殺人になるよね。
そんなことを兄の願いとはいえ弟がやるかねぇ。。
まあかなり無理のある設定な作品ですなw
と思いつつも、最後に北岡を見た女教師手塚が、実はその後で武志も見ていて、これにより北岡殺人犯が武志であることの有力な証拠になるわけだが、手塚は武志が自首することを期待して「ライトを灯火していなかったので顔が見えなかった」といったような微妙な言い回しをするあたりは芸が細かいな〜と思いました。
あとはなんといっても、2つの殺人事件とは完全に別軸と思われた、爆弾設置事件と社長誘拐事件。
この犯人が実は武志だったというストーリーは秀逸ですな。
特に社長誘拐事件の方は武志の生い立ちや考え方があらわになり、なるほど、そういうことだったのか。。といろいろ納得。
うーん、やはりいろいろと無理のある設定が多いと思うけど傑作ですな。
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