魔力の胎動 / 東野圭吾

東野圭吾の「魔力の胎動」の感想などです。

成績不振に苦しむスポーツ選手、
息子が植物状態になった水難事故から立ち直れない父親、
同性愛者への偏見に悩むミュージシャン。
彼等の悩みを知る鍼灸師・工藤ナユタの前に、
物理現象を予測する力を持つ不思議な娘・円華が現れる。
挫けかけた人々は彼女の力と助言によって光を取り戻せるか?
円華の献身に秘められた本当の目的と、切実な祈りとは。
規格外の衝撃ミステリ『ラプラスの魔女』とつながる、あたたかな希望と共感の物語。

Amazonより引用

ラプラスの魔女 に登場する羽原円華に纏わる短編集ですが、主人公は円華ではなくこの短編集で初登場する鍼灸医のナユタです。
短編集という形になっていますが、それぞれの作品には繋がりがあり、ラプラスの魔女につながっていく、、という形です。
ラプラスの魔女での羽原円華の個性もなかなかのものでしたが、それを更に際立たせている感じですね。
桐宮玲やタケオも微妙に出てきます(^_^;)
ラプラスの魔女の円華がお気に入り!という人には最高の作品かもしれません。
そうではなくても、ラプラスの魔女がおもしろかった!という人には、前日譚であるこの作品は楽しめると思います。
円華が首を突っ込む事件ということで、それぞれ乱流をテーマにした内容になっています。

以下、例によって軽くそれぞれの短編についての感想を。
ネタばれ注意で。

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風に向かって飛べ

スキージャンプの話。
正直、そう簡単に行くかよ!という気のするストーリーですが、まあ登場人物を軽く紹介するジャブのような作品ですかね。
最後はめでたしめでたしで読んでいて気持ちの良い作品ではあります。
しかし、スキージャンプというのは本当に運の要素が高い競技ですな。
風や雪質によって本当に変わってくるもんな〜

この手で魔球を

「乱流」と聞いて個人的に真っ先に思いつくのがナックルボールだったので、この作品はまさに!という感じでした。
特異な能力によって大人たちを手玉に取りまくる円華が、「プロの気持ちはプロにしかわからない」と語るシーンが素敵。
毎回円華のシナリオが功を奏すというストーリーだと思い込んでいたので、これは意外でした。
いい作品ですな〜

その流れの行方は

ナユタの恩師の話。
その恩師の子供が水難事故にあってしまい、いわゆる植物状態に。
それを治療すべく転院して担当医となったのが円華の父全太朗というストーリー。
続々とラプラスの魔女 の登場人物が出てきますな。

この恩師は自分が子育てを妻に任せきりであったことを悔やみ、事故の時の自分の対応が正しかったのか、ずっと答えを見つけようとしている、、、という乱流はおまけで人間ドラマ中心の内容。
最後は、子供は父親の声に反応していることを知り手術することを決意するという、これまためでたしめでたしのストーリーなので、読後感はとても良しでした。

ちなみに、この章からタケオが登場するので、ラプラスの魔女はこの章と前章の間から始まっていることになります。

どの道で迷っていようとも

この章はなかなか密度が濃いです。
ナユタの患者である盲目の天才ピアニストの朝比奈。
その朝比奈のパートナーが死んでしまった。
状況的に自殺と思われていたが、実際はどうなのか。
結論は愛ゆえの危険を顧みない事故だった。
ここまででも短編としてはよくできているなと思いましたが、この章はこれだけでは終わらず、ナユタの秘密に迫ります。
実はあの甘粕才生と関係があり、凍える唇に出演しており、さらに水城義郎とも深い関わりが。
いや〜こんな風につながるとはね!!
これを書きたいがために1〜3章はあったのかな〜と思わせる内容でした。

しかし、ここまで繋がりをもたせるのであれば、この魔力の胎動とラプラスの魔女のストーリーを完結させる後日譚が必要なんじゃないの!?
謙人もナユタの存在を気にかけているようだし、この伏線は最後まで回収されないままだし。

魔力の胎動

さて、満を持してこの作品のタイトルにもなっている本章です。
まさに、ラプラスの魔女の前日譚と言われるべく直接的につながっている、というかオーバーラップしています。

ラプラスの魔女の一方の主人公とも言える青江が満を持して登場です。
やっぱりこの教授も出てこないとね。
青江はラプラスの魔女ではなぜかいきなり赤熊温泉の事件の調査依頼を受けていたことになっていますが、本章ではそれにつながる灰堀温泉での事件の調査について書かれています。
この章だけはナユタも円華一味も出てこず、青江と助手の奥西哲子だけがラプラスの魔女の登場人物として登場します。

ここでは単純に赤熊温泉の事件の伏線というだけでなく、家族3人の不幸が重なった硫化水素による死亡事故や、桑原の自殺未遂の真相が描かれており、ミステリーとしてもなかなかおもしろかったです。
しかし、家族3人の方の事件はあまりに不幸な事件で、小説なのに気分が滅入りますね(^_^;)

そして、最後の最後に赤熊温泉への場面へ。
青江と謙人のニヤミスの場面で終了。
いやいやいやいや、この含みのもたせ方はラプラスの魔女を読んでないとおもしろくもなんともなく、めっちゃ引っかかる終わり方でしょうw

ということで、ラプラスの魔女を読んでいない人は読んだ方がいいですw

おしまい。

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