東野圭吾の「犯人のいない殺人の夜」の感想などです。
親友が屋上から落ちて、死んだ。自殺と思えない「俺」は当時の様子を探り始めるが…。(「小さな故意の物語」)直美は死ぬ直前にビデオメッセージを残した。その理由とは…。(「さよならコーチ」)岸田家の中で殺人が起きた。しかしそこには、死体もなければ犯人もいない…?(表題作)渦巻く人間の欲望を描いた全七編を収録。エンタメの頂点を極めた著者が贈る、珠玉の短編集!
Amazonより引用
短編集です。
東野圭吾のわりと初期の作品ですね。
改めて読み返してみると、やはり初々しいというか作品への引き込み感が少ない感じはありますが、いろいろと趣向が凝らされていて今読んでも面白いです。
東野圭吾の短編は本当にサクサク読めるので、ちょっとした空き時間に読むには最適ですね。
以下、例によって軽くそれぞれの短編についての感想を。
ネタばれ注意で。
小さな故意の物語
校舎の屋上から落ちて死んだ達也。
事故か自殺か、、と思われていたが、どちらも腑に落ちないと考えた達也の親友である主人公が真相を暴く、、という感じ。
結局達也の恋人だった洋子が曲者だったというオチ。
もちろん、「小さな恋の物語」とかけているわけですが、小さいとはいえ怖い故意ですな。
闇の中の二人
中学生の信二が自分の継母と関係を持ち、それで産まれた弟であり息子でもある赤ちゃんを殺してしまったというストーリー。
いやはや狂った人間ばかりが登場した上に救いようのない話ですな。
軽くホラー入っている感じです。
踊り子
この話は切ないです。
孝志は毎週水曜日に英語塾に通っていたが、その通り道にある高校の体育館で新体操の練習をしている女の子を発見し、恋してしまう。
どうすればいいか、家庭教師に相談してみると、応援するのが良いとアドバイスをもらう。
そのアドバイスを受け入れ、孝志は新体操の子のために体育館の出入り口にスポーツドリンクを差し入れた。
3週ほど差し入れを続けたが、なぜかその次の週から急に新体操の子は姿を表さなくなった。
孝志の家庭教師は気になったので真相を確認してみると、、、
- 新体操の子は貧乏な家庭の子で、勝手に体育館で練習をしていた
- そのため体育館の出入り口は使っておらず、したがって差し入れには気付いていない
- 差し入れがあることで、勝手に体育館で練習していることを新体操部が気付く
- 新体操部が女の子を待ち構えていて吊るし上げる
その結果、新体操の子は自殺してしまった、、、、という話。
孝志は純粋に応援したいと思って差し入れをしたのに、結果的に女の子を自殺に追い込んでしまったということですね。
うーん、切ないし、新体操の子が気の毒でならない。
エンドレス・ナイト
大阪で殺された夫と、大阪嫌いの妻の話。
どちらも頭おかしい夫婦としか言いようがないですな。
この事件の真相に気づいたきっかけは香水。
東野圭吾って結構このパターンが多い気がしますね〜
闇の中の二人もそうだし。
状況証拠としては匂いというのはちょうどいい塩梅なのかも。
しかし、大阪嫌いなはずの妻の最後のセリフ「ほな行きましょか」はどういうことなんだろう。
オチとしてはおもいろいけど。
白い凶器
ある会社の材料課で転落死が発生。
その1週間後には交通事故で死亡という事件が発生。
しかも睡眠薬が検出され、単なる事故ではなさそうということで真相を調べてみると、、、というストーリー。
真相は、白い凶器=タバコの受動喫煙により流産したと思っている女の復讐劇。
たしかに流産してしまったら誰かのせいにしたくなるよなと思いつつも、ここまで女を狂わせるとは恐ろしいと感じさせる作品。
自分もタバコは大嫌いだけど、さすがに殺人は考えないな。
さよならコーチ
アーチェリー選手の直美とコーチの話。
この2人は不倫しており、コーチの方は関係を清算したくなったが直美はコーチを追い詰める。
結果、直美は1年前に自殺未遂をしていたが、その時のビデオ録画を使ってコーチは完全犯罪を企てる、、といった内容。
計画は完璧だった、、はずだが、直美は直前でコーチが殺そうとしていることに気付き、1年前に録画したはずのビデオテープを微妙に変えたものにすり替えていたことに、コーチは殺害後に気付く。
直美が睡眠薬を飲んで眠ってしまう直前に発した「さよなら・・・コーチ」という最後の言葉が蘇る。
いや〜よくできたストーリーですね。
1年前に自殺未遂をしていてその様子を録画していて保存してあるというのはご都合主義としか言いようがないですが、この最後のオチは素晴らしい。
犯人のいない殺人の夜
拓也パートである<今>と雅美パートである<夜>。
この叙述トリックがまずおもしろいですね。
完全に騙されました。
まさか死んだ人間が「わたし」として表れているなんて思わないよね(^_^;)
しかもこれだけではなく、死んだと思わせた人間が実は生きていたが最後に本当に殺してしまうというのが最終計画。
いや〜よくこんな話を思いつきますな〜
しかし、完全犯罪だと思われたこの計画もまさかの予定外のガムのせいで真相がすべて露見してしまった。
ほんとによくできていて、短編ではもったいない内容だなと思いました。
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