ガリレオの苦悩 / 東野圭吾

東野圭吾の「ガリレオの苦悩」の感想などです。

“悪魔の手”と名のる人物から、警視庁に送りつけられた怪文書。そこには、連続殺人の犯行予告と、帝都大学准教授・湯川学を名指して挑発する文面が記されていた。湯川を標的とする犯人の狙いは何か?常識を超えた恐るべき殺人方法とは?邪悪な犯罪者と天才物理学者の対決を圧倒的スケールで描く、大人気シリーズ第四弾。

Amazonより引用

聖女の救済」と同時発売。
あちらでも書いたけど、どちらが第4弾でどちらが第5弾かは不明だが内海薫がこちらで初登場するので、こちらが第4弾かな?

初登場となる内海薫もなかなかいい味を出していて、さらに湯川を取り巻くやりとりに深みを増した気がします。
ミステリーの内容は第1弾、第2弾の 探偵ガリレオ予知夢 と同様、サイエンスを駆使したマニアックなトリックの短編集となっています。

しかし、もはや恒例になりつつある?漢字2文字+るで読ませる当て字がタイトルになっているのはどういう趣旨なんだろう??

以下、例によって軽くそれぞれの短編についての感想を。
ネタばれ注意で。

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落下る おちる

内海薫が登場します。
湯川は警察に協力しない姿勢となっていますが、これは前作容疑者Xの献身の流れなのですかね?

正直この作品はちょっといまいちだったかな〜
薫の登場と湯川がまた警察に協力する伏線のために作った作品という感じがしてなりません。
薫がいろいろと苦労して実験した結果編み出したアリバイトリックがあるにも関わらず、真相は自殺だったというところまではまあいいとしても、結局なんで真相が自殺だったの?という説明がまったくないように思う。
薫が編み出したアリバイトリックも現実的ではないようだけど、警察ではそういう扱いでもないし、どういう根拠で自殺ということになったのだろう??
それに、薫のアリバイトリックは湯川が説明するまでもなく普通に考えてかなり無茶があると思うし。
これが真相だったらツッコミどころありまくりでどうしようかと思ったよw

死んだ千夏と岡崎が恋人だったというところまでは面白かったんだけどな〜
なんとか岡崎が犯人になるようなストーリーを考えてほしかったw

操縦る あやつる

今回の「ガリレオの苦悩」はこの作品から来てますね。
この作品は傑作だと思います。

メタルの魔術師と呼ばれた湯川の恩師「友永幸正」。
まあ、伏線からして足が悪くて一見まったく殺人なんてできそうもないこの人がたぶんやったんだろうな〜とは思いましたが、「爆発成形のおける金属の流体的挙動の解析」からの様々な伏線から湯川が推理して殺人の真相を解明。
意外性はなかったですが、納得の行くストーリーで、ここまででも普通に良い作品でした。

が、ここからさらにもう一捻りあったとは!!
友永幸正は体が不自由なため、事実婚の上できた娘奈美恵に介護をしてもらっていました。
そこで、諸悪の根源である正妻の息子の邦弘を殺害した上で、自分が逮捕されて刑務所に行けば、奈美恵は介護からも開放されて自由の身となれる、というのが幸正のストーリー。
そのためにはできるだけ長い刑期である方が良く、自首してしまっては刑が軽くなってしまうので、あえて今回の殺人を解き明かしてもらうために湯川を呼び、さらにはヒントまで与えていた。

いや〜すごい話ですな!
そして、最後の湯川の人間味あふれる言葉は、物理変人な湯川が言っただけになかなかしびれます。

繰り返しますが、ホントいい話ですな〜

密室る とじる

湯川の友人、藤村伸一に纏わる話。
藤村伸一はペンションを経営しており、そこに泊まりに来た原口清武という男が渓谷に転落死したという事件が発生。
その事件の真相を調べるべく湯川に依頼したというストーリー。

クレセント錠の写真については、うーん、そういういこともできるかな?くらいには納得しましたが、風呂の泡については正直ちょっとなーという感じ。
たしかに一番風呂の方が圧倒的に泡は出やすいと思うけど、二番風呂以降だと泡が出ないとも限らないんじゃないかな。
ちょっとモヤるな。

それにしても、東野圭吾は密室は嫌いだと思っていたのだけど、これは完全に密室モノだよねw
漢字もそのまんまだしwww

最後は藤村の妻とその弟の2人に自首を促そうと藤村が発言し、めでたしめでたし。
最初の頃は単なる物理変人だった湯川はいつの間にか高尚な人間になっていっていますな。

指標す しめす

ダウジングの話。
正直ちょっとスッキリしませんね〜
最初に容疑者となった真瀬貴美子の娘葉月は何をするにもダウジングしていたっぽい描写があるにも関わらず、重要な証拠となるクロの死体の在り処に行った時には単にありそうな場所に行っただけ、というのはね。
本当に日頃からダウジングでバシバシ当たるならこの時もダウジングした方が確実にクロの元へと行けたと思うんだけどな。

まあ、最後は若干悪そうなやつが犯人であることが判明して、めでたしめでたし。

攪乱す みだす

いきなりネタバレすると、超指向性スピーカーを使った超音波で平衡感覚を狂わせることによる殺人。
こういうトリックこそガリレオシリーズ!という感じがしますな〜

悪魔の手による予告殺人と見せかけて、実は確実性のある殺人ではないので、実際には殺人後に連絡していたというのも、なんとなくそうかな?と思わせるレベルの叙述で素晴らしい。

いまいちだのスッキリしないだの言いたい放題言っていますが、なんだかんだ言ってどの作品も楽しく読めるのが東野圭吾のすごいところですな。

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