東野圭吾の「探偵ガリレオ」の感想などです。
突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮んだデスマスク、幽体離脱した少年…警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた謎に天才科学者が挑む、連作ミステリーのシリーズ第一作。
Amazonより引用
ガリレオといえば物理学・天文学を中心に活躍した近代科学の父とも言われる偉人。
物理学者の湯川が、科学を駆使したトリックを解明し、難事件を解決していく短編集です。
このあとガリレオシリーズが次々と発表されていきますが、その記念すべき第一作ですね。
トリックについてはかなり強引な設定だと思いますが、それらの核心部分には必ずマニアックな科学的要素が用いられており、なかなかおもしろいです。
自分は物理学専攻でもない理系だったからかもしれません(^_^;)
また、このシリーズのいわゆるワトソン役の草薙刑事が理系音痴という設定で、この草薙と科学バカとも言える湯川の掛け合いもおもしろい。
東野圭吾特有の読みやすい文章なので基本的には誰でも楽しめるとは思いますが、あまりにマニアックな科学要素が次々と出てくるので一般受けはしないだろうな〜と思っていましたが、福山雅治のおかげで大ブレイクしましたね笑
今や、ガリレオシリーズといえば東野圭吾を代表する作品になっていますが、正直この「探偵ガリレオ」はそこまでの作品ではないな〜というのが率直な感想です。
以下、例によって軽くそれぞれの短編についての感想を。
ネタばれ注意で。
燃える もえる
深夜のバス停に若者が集まって騒いでおり、近隣の住民は迷惑していたのだが、ある晩そこにいた若者の1人の頭が前触れ無く突如燃え上がり、焼死してしまったという事件。
まさに物理学という感じの設定ですね。
結局レーザーを使って燃やしたというのが真相だったので直接的な要素としては非常にシンプルだったのですが、それに至るまでの経緯やそれぞれの登場人物の心情など、短編にも関わらずなかなか濃い内容でサクサク読めたわりには読み応えがありました。
転写る うつる
学校の文化祭に展示されていたゾンビのデスマスクの話。
このデスマスクが非常にリアルで、しかも行方不明となっている柿本進一と非常に似ている。
これを出展した学生に聞いてみると、ひょうたん池という池でこの原型となったアルミ製のものを拾ったらしい。
どうして、柿本進一そっくりなアルミの型がひょうたん池にあったのかという謎を湯川が解明します。
真相は、遺体として柿本進一はひょうたん池に遺棄されており、その状態で雷による巨大な電気エネルギー由来の衝撃波が池の中で発生し、それによりアルミが遺体の顔に強力な力で張り付けられたことによってアルミが柿本進一の顔の形に変形したというものでした。
正直ここまででもうーん、という感じですな。
そんなに都合よくアルミ材が顔にくっついていたりするかねとか、そもそも雷で池に衝撃波が発生する条件に鉄骨とかやらコードやらがいい感じに配置されている必要があったりとか、かなり現実味がない設定。
しかも、この雷があった日というのが重要で、これによりいわゆるアリバイトリックを見破るきっかけになっていたりするので、そんなに都合の良い日に雷が落ちるかね〜というのもあるw
が、この作品というかこのシリーズ?は、かなり非現実的な設定でも科学的な見地ではこういうことが起きる可能性もゼロじゃないよね?といったものを楽しむのが正解かもしれない。
現に、こんなこと絶対ないなと自分も思いますが、読んでいて楽しかったですw
とはいえ、最後のオチで、柿本進一が実は衝撃波の研究をしていたというのはさすがにちょっとなーと思ったが笑
壊死る くさる
超音波加工を行う機械を使った殺人の話。
正直この作品は結構ストレートな書き方だったので、ミステリーという感じもしないし読ませるな〜という感じもなかったかな。
ひたすら、内藤聡美という女の怖さを感じた作品。
こういう狂った人間はほんとに怖い。
しかし、実際強力な超音波を人体に作用させた場合って、心臓麻痺したり皮膚が壊死したりするのだろうか??
爆ぜる はぜる
ナトリウムを使った殺人の話。
一応自分は理系なので、最初の海での事故の描写を読んだときに「ナトリウムか?」と思いました。
そういう意味ではまったく意外でもなんでもなかったのですが、その後の展開はまったく予想できず、読み終わったあとにはなるほどな〜と納得するものでした。
いろいろな伏線が最後にすべて明らかになる系の作品ですね!
離脱る ぬける
マンションで女性の死体が発見され、前日にその被害者と保険の手続きで会っていた栗田が容疑者として浮上する。
その栗田は死亡推定時刻は赤のミニクーパーで別の場所の多摩川の近くにいたと証言しており、それが正しければアリバイが成立するという状況。
そのアリバイを肯定も否定もできる材料は出てこなかったが、上村宏の息子忠宏がミニクーパーが多摩川の近くに停まっていたのを見ていて、それをスケッチに残していたと連絡があった。
ただし、忠宏がいた位置からは通常では赤のミニクーパーは物理的に見えないはずであり、上村宏曰く幽体離脱して上方から見ていたというので、その証言の信憑性が疑われていた、、、という感じ。
真相は、、、薄々そうじゃないかと思っていたけど光の屈折、いわゆる蜃気楼で見えていたというもの。
それだけだと単純な話なのだが、そこに行き着く前に、工場の大扉の問題があったりして、なかなか読みごたえのある作品でした。
そして、どうやらこの作品で湯川=ガリレオ先生が定着した模様。
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