嘘をもうひとつだけ / 東野圭吾

東野圭吾の「嘘をもうひとつだけ」の感想などです。
加賀恭一郎シリーズ第6弾。
「嘘をもうひとつだけ」「冷たい灼熱」「第二の希望」「狂った計算」「友の助言」の5つの短編集です。

以降ネタばれありなので注意。

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嘘をもうひとつだけ

元バレリーナの話。
加賀恭一郎とバレリーナといえば、眠りの森 / 東野圭吾 を思い出しますが、特に関係ない様子。
せっかくバレリーナについていろいろ取材したのだから、もう1つくらいバレリーナ関係の話を書いてみようか?みたいなノリなのかなw
バレリーナならではの状況と特有の動機で、なかなかおもしろかったです。

冷たい灼熱

自宅に帰った夫は家で妻が死んでいるのを発見し、さらに幼い息子の行方がわからない。
その後は夫の視点で物語は進んでいくが、実はその夫の狂言だったというプチアクロイドなお話。
ただ、実はその夫も通報前に同じように妻に狂言されていたという、言わばダブル狂言話。
そういったちょっと凝った話になっていつつも、物語の根本はパチンコに夢中になったあげくの幼児放置による熱中症についての社会風刺だったりもする。
よくできていますね。

第二の希望

娘をオリンピック選手にしたいと考えているシングルマザーの話。
自宅で懇意にしていた男が死んでいたので通報。

正直この作品はいまいちだな〜と思った。
伏線とかトリックとかは良いのだけれども、そんなアクロバティックな殺し方するかね〜とか、そもそもなんで殺したの?という気もしたし。
だいたい、人殺しておいてそんなに普通でいられるものかな?
これが普通だとしたら末恐ろしいモンスターとしか言いようがない。
といことで、話としてはおもしろいけど現実味が全然ないなという感じでした。

ただ、「それが、あなたの第二希望ですか」という加賀のセリフはなかなかシャレていたな。

狂った計算

交通事故で夫を亡くした女性の話。
この話もストーリーはおもしろいのだけれども、そんな偶然あるかね〜という気はするw
まあ、現実味はちょっとないけど、お話としては死体の入れ替え的な謎はちょっと意外で意表疲れました。
加賀も分かっていなかったみたいだしw

しかし、ベッドルームに目をつけて水鉄砲で天井を濡らし、罠をかけておいて勝手に庭から侵入するというのはどうなんだろう。
正直ちょっと雑だな〜という感は否めなかった。

友の助言

加賀の大学時代の友人萩原が居眠り運転で自爆し、入院。
加賀は単なる事故とは思えないと言うが、萩原はただの事故を主張する。
犯人は最初から萩原の妻であることは読者にもうすうす分かりそうに書かれている。
したがって、この作品では犯人の意外性はまったくない。
萩原の妻が未必の故意で殺そうとしたことを萩原が認めないことに対して、加賀がいかにして認めさせることができるか、がキモです。

単に事故に関する真相を詳らかにして認めさせるだけでなく、萩原の妻の心が他に行ってしまっていることまでを明らかにすることにより、理屈だけでなく感情的にも最後は萩原に妻の悪意を萩原に認めさせるというところがおもしろいですね。

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