素敵な日本人 / 東野圭吾

東野圭吾の「素敵な日本人」の感想などです。

一人娘の結婚を案じる父に、娘は雛人形を指差して大丈夫という。そこには亡き妻の秘密が…。(「今夜は一人で雛祭り」)独身女性のエリーが疑似子育て体験用赤ちゃんロボットを借りたところ…。(「レンタルベビー」)世にも珍しい青色の猫。多くの人間が繁殖を目論むが…。(「サファイアの奇跡」)日本人に馴染み深い四季折々の行事を題材にした4編と、異色のミステリ5編を収録!

Amazonより引用

全9作品からなる短編集です。
東野圭吾らしく、それぞれにそれなりのオチが用意されていておもしろいです。
ミステリー度は低いですが、サクサク読めて重い内容もないので、気軽に読める逸品ですね。

以下、例によって軽くそれぞれの短編についての感想を。
ネタばれ注意で。

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正月の決意

正月の朝にある思いを秘めつつ初詣に行った夫妻のお話。
そこで夫妻は事件に巻き込まれるのだが、そこで出会う人々がことごとくアホでしょーもない人たちばかり。
しかも、それらが町長、教育長、警察署長、宮司といったような社会的地位のある人たちばかり。
実は夫妻は経営に行き詰まっていて自殺することを考えていたのだが、こんな社会的地位のある人たちがアホでテキトーなことをやっているのを見て死んでしまうのがバカバカしくなり、自殺するのを思いとどまったというオチ。
ほとんどすべて喜劇としか言いようのない展開ながらも、最後のオチである意味唯一まともな夫妻が救われるという展開が素敵。
いいお話ですな。

十年目のバレンタインデー

この作品はなかなかミステリーとしても読ませますね〜
人気作家の峰岸がかつて恋人だった知理子と10年ぶりに再開するというお話。
2/14にフレンチレストランで会うというシチュエーションに峰岸はある意味期待しつつ向かったのだが、そこで知理子の親友の藤村絵美の話題になる。
実は峰岸は藤村絵美とも知理子の前に付き合っており、しかも、絵美が書いた小説を盗んで発表してしまうということもしてしまい、さらには自殺に見せかけて殺害していた。

そのあたりの話を少しずつ小出しに知理子が出してくる展開には鳥肌がたった(^_^;)
別にオレが悪いことしているんじゃないんだけどなw

そして結局知理子はすべての真相を知った上で話をしていて、最後は峰岸を逮捕してしまう。
知理子は絵美の事件を調べるために刑事になったというオチ。怖い(^_^;)

今夜は一人で雛祭り

主人公の三郎の娘真穂が結婚することに纏わるお話。
相手はものすごい名家で堅苦しく、間違いなく苦労するであろうと悩む三郎。
しかし、実は三郎の妻も似たようなものだったのだが、妻は自分なりに楽しみつつ苦難を乗り越えるすべを持っていたということを雛人形に纏わる話から三郎は悟る。
真穂もそのことは知っていて、自分はその娘だから大丈夫だろうというお話。
正直ぜんぜん大丈夫な気がしないので、ちょっとモヤる話だったかな(^_^;)

君の瞳に完敗

主人公の内村は合コンでモモカと仲良くなる。
しかし、仲良くなったもののそこからの一歩がなかなか踏み込めない。
そうこうしているうちに、モモカのカラーコンタクトを外した顔を見ることになったが、すると、、、まさかの指名手配犯www
実は内村は刑事で見当たり捜査対応だったというオチ。
この大どんでん返しは面白かった。

レンタルベビー

主人公エリーが本物の赤ちゃんそっくりのロボットであるレンタルベビーを育ててみたというお話。
最初は文句たらたらだったエリーだが、それでも育児をやっていくうちにどんどん愛情がわいてくるといういいお話です。
しかし、最後のオチはエリーは60歳だったらしいwww
どうやら未来のお話だった模様。
まあ、ロボットのベビーをレンタルできるくらいだからけっこうな未来でも納得。

壊れた時計

この短編はミステリー色が強くて面白かったです。

主人公はいわゆる闇の仕事を請け負うことで生活をしていたのだが、今回請け負った仕事では誤って殺人を犯してしまう。
その時に死んでしまった人の腕時計を壊してしまったことに気付き、このままだと犯行時刻がわかってしまう!ということで、時計店へその時計を持っていき、修理をして、しかも死人に戻した。
正直なんでわざわざ戻したのかはよくわからんけど、請負先の人間からは、「なにも余計なことをするな」と言われていたので、時計だけでも死ぬ前の状態に戻したかったということなのかな。

しかし、実はその時計は元々壊れていたようで、逆になんで死後に直ってるの!?という話になり、そこから主人公の足がついてしまって逮捕されてしまったといオチw

サファイアの奇跡

主人公の未玖は5年生の時に薄茶色の猫イナリと出会い、仲良くなってマシュマロをあげたりしていた。
しかし、その後イナリは未玖の知らない間にトラックに轢かれて死んでしまったらしい。

時は流れ、未玖は大人になりトリマーとなっていた。
未玖は動物病院で青毛の珍しい猫サファイアと出会う。
誰にも懐かないはずのサファイアだったが、未玖が抱いても抵抗されない。
そして未玖がマシュマロをあげるとうれしそうに食べる!
実はサファイアはイナリの脳を移植した猫だったというオチ。
東野圭吾は脳の話が好きですな〜

クリスマスミステリ

タイトルの通りこれはミステリーですなw

人気俳優である黒瀬は恋人である大御所脚本家の弥生を殺害しようとしていた。
実際、黒瀬はその計画通りに遂行。アリバイ等は完璧。
しかし、なぜか毒殺したはずの弥生は死んでおらず、ピンピンした姿でパーティーに現れた。

パーティー終了後、弥生は黒瀬を自宅に呼び出す。
そして、その後弥生は自殺するのだが、黒瀬の殺害計画を逆手に取り、黒瀬を犯人に仕立て上げるというオチ。
結局、黒瀬は自分が元々殺害計画を立て、遂行したことを警察に話す羽目になったのであった。
女は怖いですな。

水晶の数珠

これはおもしろかった。

主人公の直樹は父親の反対を押し切ってアメリカで役者として頑張っていた。
しかし、ある日姉から父が末期癌になっており、最後の誕生日パーティーを行うから来てほしいという電話をもらい、帰国することを決意する。
しかし、日本に到着して現地に向かおうとした時に父親から電話がかかってきて散々罵倒される。
結果、直樹はそのままアメリカに帰ってしまう。

その後、父親は死んでしまったため、直樹は再び帰国し、そこで父親の遺言状と遺産である水晶の数珠を受け取る。
遺言状には数珠について書かれており、この数珠は1日だけ戻ることが出来るという力があるらしい。
そして、遺言状には父親も最も大事な時に数珠の力を使ったと書かれていた。
これがまさに直樹が最初に帰国した時のことだとわかった時の衝撃!
この時直樹が帰国していなければ、トラブルにより一世一代の大チャンスであったオーディションには参加することができなかった。
結果的にはそのオーディションでは落選してしまったのだが、父親の愛の深さですな。
そして、それを知った直樹が立ち直るというストーリーも清々しくて良いのだけれども、結局役者として活躍できるかどうかはわからない状態で終わっているので、実はこのまま役者としてはいまいちのまま終わってしまって、あの時スッパリ諦めていたほうが良かったんじゃないの??という結末が見えないこともないので、そこがちょっとモヤモヤしますな(^_^;)

おしまい。

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