真夏の方程式 / 東野圭吾

東野圭吾の「真夏の方程式」の感想などです。

夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平。一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。翌朝、もう1人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは―。

Amazonより引用

ガリレオシリーズ第6弾。
今回は長編です。
まず、大ざっぱな感想としてはとてもおもしろかったです( ̄ー ̄)
ただ、細部はいろいろおもしろかったのに、肝心なところがちょっと納得いかない、、、という感じですかね。

事件のメインストーリーとは別に、勉強嫌い、特に理科が嫌いな恭平に対して、いろいろ興味深く「知る」ことの楽しさを伝えようとする湯川のやりとりがおもしろい。
特に、ペットボトルロケットの件とか三角形の内角の和とかの話はなかなか楽しませてくれます。
この湯川と少年との交流は本当に良いですね。
湯川の科学バカの健在ぶりとあわせて、ホントに湯川に関してはとてもよく描けているな~と感じました。

また、次々と現れる新事実とその解明は、小気味よく進んでいくので退屈しません。
細かいことを気にしなければ、ドロドロの人間関係が明らかになっていくにも関わらず、夏休みの美しい海で起きた事件を様々な情愛を絡めて描いた美しい作品、、と言えるのではないかと思います。

ちなみに今回のこの感想ですが、再読したにも関わらずほぼ1回目の感想のままです。
1回目の感想を見て、うーん、なんか昔のほうがきちんと読み取れていて表現もよくできているな〜と感じてしまいました(/_\*)
読解力や表現力がどんどん落ちていってしまってますな。。。

以下ネタバレありの感想です。

真相はもちろん分かりませんでしたが、かなり序盤で、まさか恭平が殺人の一端を担っているんじゃないだろうな、、、と感じたので、やはり!という感じでした(^_^;
故意の殺人だったら救いようがなくて、これじゃ何でもありだな、、、という感想になってしまうけど、そこは上手いこと無意識での共犯に仕立て上げられていたのでよかった。
しかも、理科の実験風の教育でそれを恭平に自ら気付かせるあたりはホントに秀逸だと思いました。

ただ、真相については全てが解明された後でも納得がいかない点が多々あります。
例えば、、、
・川畑成実が殺人を犯してしまった場面、三宅伸子が家族の秘密を握っていることを知ったくらいで、果たして殺人を犯したりするだろうか?ちょっと無理があるのでは?
・重治は実の子ではない成実の殺人をかばうために塚原を殺したようだが、これもちょっと無理がある気がする。育ての親として愛情があったのかもしれないが、そういった描写は特に感じられない
・沢村が死体遺棄を積極的に支持したらしいが、いくら玻璃ヶ浦のイメージを守るためと言ってもやり過ぎでちょっとあり得ない

というわけで、物理的なトリック、、、煙突を塞いでおそらく押し入れあたりの隙間から一酸化炭素が充満し、、、というのはすぐに予想がつくわけですし、スッキリとしたトリックなのですが、それぞれの動機がどうもシックリこなさすぎなのが残念。
仙波の心情はとてもよく描かれていて非常に共感できただけに、そのレベルでそれぞれの人物の心情が描けていれば、、、と思います。
絵の件なんて非常にシックリ来ました。

また、一番残念な点は、結局被害者となった塚原がまったく浮かばれないこと。
この作品中で一番の人格者と言って良いのに、結局川畑家に不幸をもたらす人間と勘違いされて殺されてしまい、その結果一家は離散、、、という最悪の結果。
しかも、恭平も犯罪の一端を担うことになるし。
恭平が今後どう生きていくか、、を考えさせられる終わりにはなっていますが、とてもハッピーエンドとは言えず、作品自体は美しい印象なのに、非常に読後感が悪いのがホントに残念でした。

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