東野圭吾の「学生街の殺人」の感想などです。
学生街のビリヤード場で働く津村光平の知人で、脱サラした松木が何者かに殺された。「俺はこの街が嫌いなんだ」と数日前に不思議なメッセージを光平に残して…。第2の殺人は密室状態で起こり、恐るべき事件は思いがけない方向に展開してゆく。奇怪な連続殺人と密室トリックの陰に潜む人間心理の真実。
Amazonより引用
東野圭吾の初期の作品です。
大学卒業後、就職せず学生街でそのままバイトで生活している主人公光平が殺人事件に巻き込まれるというストーリー。
「密室」という用語が出てくるくらいで、この作品以前のようにトリックにも力を入れていると思いますが、事件の謎だけでなく登場人物達の謎を大きな焦点として書かれていることが特筆すべき作品かなと感じます。
東野圭吾と言えば、今はミステリーというよりは人間ドラマを描く作家というイメージが個人的には強いですが、その傾向が少し出てきたのがこの作品からなのかな?と感じました。
張られた伏線はすべて回収され、最後は真相が全て明らかになってスッキリという意味では気持ちの良い終わり方ではあったのですが、良くも悪くも少々いろいろな内容を盛り込みすぎて少し間延びしてしまったかな〜と個人的には感じました。
そういう意味では、読んでいる間はとても面白かったのですが、読了後は若干印象の薄い作品になってしまった感はあります。
隠れキャラ的な話としては、この作品の「学生街」というのは具体的にどこの地方でどこの大学であるかは全く書かれていないのですが、かなり終盤で「首を振るピエロ」というカフェが出てきます。
これは実は、卒業 雪月花殺人ゲーム で頻繁に登場するカフェで、実はこの学生街が卒業の場所とオーバーラップしていることが分かります。
ちなみに、今回の学生街が旧学生街で卒業の方は新学生街と呼ぶべき位置付けのようですが。
まあ、これは卒業を読んでいないと全くわからない話なので、マニア向けですね(^_^;)
以下ネタバレありの感想です。
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この作品の特筆すべきところの一番は、冒頭でも書いたように登場人物達の謎を大きな焦点としたこと、つまり「人間」についての描写に重きを置いたことにあると思いますが、ミステリー的には一度表面的には事件の真相を表しておいて、実はその裏にはまだ真相があったといったような二段構えになっていたことだと思います。
具体的には、松木は言わば産業スパイとして井原に協力していたが、井原にとって都合が悪くなったので松木を殺害。(その前に井原と松木の関係を知る長谷部を殺害)
しかし、松木は産業スパイとして井原に協力していた証拠を予め他人に託しており、それを託されたと思われた広美を殺害。
ここまでが最初の2つの事件の表の真相なのだが、実は1つ目の事件はそのままだけども、2つ目の事件はママの純子が裏で誘導した結果だったというもの。
これは本当によくできているな〜と思いました。
実際、2つの事件は表の真相で決着が付きつつあり、3つ目の事件で純子が容疑者であることが判明しても裏の真相が出てくることはなさそうだったが、光平が純子にかけた電話の応答から裏の真相がわかった時には鳥肌ものでした。
たしかに、松木が死んでいるのを発見した時にかかってきた電話の伏線は回収されていなかったな〜
なんで、こんなにわかりやすくて印象深い伏線がそのままになっていたのを気づかなかったんだろう(/_\*)
しかし、まさかその電話の相手が純子だったとはまったく思いつかなかった。
登場人物的に考えてもすぐにわかりそうなものだったが(/_\*)
といったわけで、個人的にはミステリー的にもとても楽しめた一作でした( ̄ー ̄)
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